コラム・その他

2022年GIGA2年目 ICT教育の現在地

全体的にGIGAスクールが進み、その活用における教員と保護者との感覚の違い、環境整備が整っていない状況が散見されます。その中から気になった3つをピックアップしました。

ICT教育 教員9割「進んだ」、保護者4割「進んでいない」

教員と保護者の感覚に約3割の差がある?

コロナ禍の小学校のICT教育について、教員の約9割が「進んだ」と回答した一方で、保護者の約4割が「進んでいない」と回答したことが5月31日、パーソルプロセス&テクノロジーのアンケート調査結果によって明らかになった。

教育新聞より引用

ICT支援員の私からすると、教員の「進んだ」という意見の方が納得できました。というのも、以前であればあり得なかった「オンライン授業」「オンラインを用いた協働授業」というのが当たり前にみられるようになったからです。

ではなぜ保護者の4割は「進んでいない」と回答したのでしょうか?

実はこのデータには裏があります。というのもICT教育についての質問について保護者の17%は「とても加速した」と答え、42.3%も「やや加速している」と答えています。つまり約6割の保護者が「進んだ」と感じているのです。

教育新聞より引用

しかしそうだとしても教員と保護者の感覚には3割の差が生じています。その差はなんでしょうか?

教育現場は「15年遅れのITトレンド」?

これは主観ですが、私がICT支援員になって3年ほど経った頃、学校のICT(IT)活用は15年前で止まっていると感じました。それは2001年のITトレンドが、学校のICT活用と言われている状況に当てはまると感じたからです。

簡単に2001年のITトレンドを振り返ると

●インターネットの常時接続が始まる
●インターネットバンキングが開始された
●ウェブカメラが開発される
●ADSLという高速接続が拡大

といったものでした。

つまりネットを使った授業がイコール「ICT教育」と定義付けられていたような気がします。

またコロナ禍になる前の2019年の時点でも「15年遅れ」の状況はなかなか埋まりませんでした。いわゆる「調べ学習」や「動画視聴」がICT教育という考えからなかなか進まなかったのです。

コロナ禍で一挙に「ICT教育の加速」が進む

それがコロナ禍で一挙にあらゆるものが加速し始めました。

GIGAスクールが1年前倒しになり1人1台タブレットが貸与されました。

それと同時に「オンライン協働学習」が始まりました。

以前は紙に必ず印刷して配布いたものが、クラウド上のスライド、ドキュメント等で共有できるようになり、「コンピュータを使った学習」が授業の3分の1〜半分をを占めるようになりました。

そしてコロナ禍が猛威を振る頃には「オンライン授業」「ハイブリット授業」という以前では考えられなかった授業が始まりました。

「保護者」「生徒」のデジタルネイティブ度

一方で保護者、生徒さんの状況はどうでしょうか?

以前からデジタルネイティブという言葉が聞かれます。

その中でも「X世代、Y世代、Z世代、α世代」という4分野に分かれるそうです。

2022年の現在次のように定義されると言えるでしょう。

参考資料:コエテコなど

X世代(デジタル移民)1965年〜1980年生まれ
57歳〜42歳
20、30代の時にデジタル化が進む。この頃の初期の段階では、デジタルを使うか、アナログを使うかは個人の選択に任されている時代でもあった。
Y世代(ミレニアル世代)1981年〜1996年
41歳〜26歳
幼い時から、デジタル化が急速に進み、SNSを使うことにも抵抗がなく、人に聞くより、ネットで情報を探すのが普通の世代。オンラインの交流もSkypeなどを使って子供の頃から行っているのも珍しくない。
Z世代1997年〜2010年
25歳〜12歳
生まれた頃からネット・デジタル環境が整い、さまざまなデジタル機器に触れてきた世代。初めての携帯がスマートフォンという人も多い。SNSネイティブのため、SNSはコミュニケーションツールとして使って当たり前と捉えている世代でもある。
α世代2010年〜2022年
11歳〜0歳
ミレニアル世代の子供たちが多い。早い頃からプログラミング教育に親しみ、ネット決済、キャッシュレス決済などのデジタルでのお金のやりとりに慣れている。

X世代が多い教員対ミレニアル世代以降の保護者と生徒

文部科学省は2021年3月25日、2019年度(令和元年度)学校教員統計調査(確定値)を公表した。
公立学校の本務教員(以下、教員)の平均年齢は、幼稚園40.6歳(前回調査時より0.4歳低下)、小学校42.6歳(同0.8歳低下)、中学校43.6歳(同0.3歳低下)、高校46.1歳(同0.1歳上昇)。

教員採用者数は公立小で増加…学校教員統計調査(確定値) 

教員の平均年齢についてこのような結果が報告されました。

教員の平均年齢はX世代に該当することがわかります。

一方保護者の年齢層はどうでしょうか?

結婚する年齢層は年々高くなっていると言いますが、全体的にミレニアル世代が多い印象を受けます。

そしてそのお子さんである生徒はというと、中学生以上はZ世代に該当し、小学生以下のお子さんはα世代に該当します。生まれながらにネット・デジタル環境が整い、SNSは使って当たり前、デジタル機器で学習するのも当たり前の世代です。

デジタル移民で一生懸命新しい技術について行こうと頑張りつつも、学校のシステムが「15年遅れのITトレンド」の中で仕事をしてきた教員と、幼い頃からデジタルネイティブの世代の保護者と生徒では、「進んだ」度合いについて感覚の差が大きいのもうなずけます。

低速なネット回線で進まないICT教育

クラウドはネットの環境あってのものなのに…

これは、かなり深刻な問題です。

というのも私の担当校ではGIGAスクール専用の回線はいつも遅くて辟易としています。

例を挙げましょう。

ある日GIGA端末からプログラミングをすることになり、その際オンライン上にあるソフトにログインすることになりましたが,なかなかログインできない状態が続きました。

その際に生徒側のGIGA端末で計測した速度が下の画像です。

この時、一斉に同じアクセスポイントに38台を繋いでいる状態でした。

ログインができない生徒が続出したため、一回再起動をしてもう一度ログインするようにアナウンスしました。接続はできても速度が遅く、生徒さんはかなりのストレスがあったと考えられます。

その同じ場所で同じ時間にSIM回線から接続した私のタブレットで計測した速度が下の画像です。

UPLOADの3.32Mbpsというのがかなり遅く感じますが、それでもdownloadが52Mbps出ているので、通常の授業では差し障りがない程度の速度が確保されていると感じました。

回線の速度低下は、クラウドに頼っているGIGAスクールの状況にも良くない影響を与えます。

早い段階で回線を高速化し,最低でも50Mbps以上出るようにしてほしいと思っています。

ネットいじめという悲しい状況

GIGAスクールのせいという誤解

子供たちに「一人一台端末」を配る国の「GIGAスクール構想」の被害者が出た。昨年、全国に先駆けて端末を配った東京都町田市のICT推進校で、小6の女の子がいじめを苦に自殺したのだ。配布端末のIDは出席番号、パスワードは全員「123456789」で、なりすまし被害が横行していた。当時の校長は、20年以上前からICTを学校教育に取り入れてきた先駆者で、GIGAスクール構想の旗振り役として知られる人物だった――。

プレジデントオンラインより引用

いじめというと、以前は直接、もしくは学校外で使うスマホや、ネットで被害を受けるというのがあり、教員は直接いじめを受ける、親御さんは学校外で使うスマホやネットでいじめを受けたらという点に注意を向けて,対策を行っていました。。

しかしGIGAスクールにより、その端末を使っていじめを受け、それを苦にして自殺をしてしまうという痛ましい事件が発生したのです。

教員も、親御さんも以前の対策では対応しきれない部分でもあり、中には「GIGAスクールを廃止すべきだ」という声も聞かれたりします。

しかし本当に「GIGAスクールはいじめの原因」なのでしょうか?

車に例えて考えてみたいと思います。

交通事故を起こすのは“車“ではなく“人“

交通事故死者数及び重傷者数は減少。うち高齢死者の割合は増加 死者数 2,636人(前年比-203人、-7.2%)
重傷者数 27,204人(前年比-571人、-2.1%)

令和4年3月3日 警察庁交通局

令和3年度の交通事故の件数です。その中で死者、重傷者の件数は合わせて約3万件ということがわかります。
これはかなりの件数です。もしGIGAスクールで、このぐらい件数の問題が起きたら、早い段階で打ち切られるばかりか、生徒に一切端末を与えないという動きになるでしょう。

しかしかなりの件数の交通事故が起きても車は無くなりません。

第一に車はエンジンをかけなければ単なる鉄の塊です。存在しているだけで事故を起こすのではありません。操作している人間の不注意などが事故を引き起こすのです。

第二に車を運転するには免許を取ります。交通安全を正しく守って、注意を怠らず運転できるように学べる場があります。

GIGAスクールも車のように安全や他の人への思いやりを持って、正しく扱う教育の場が必要です。そして適切な管理が必要です。電源を入れなければただの金属と樹脂などでできた板なのですから、端末を一人一台配った事が問題なのではありません。

尼崎市教育委員会の3つの取り組み

そういったタブレットやPCなどを正しく扱うようにICT教育に力を入れている地方自治体などはないか調べてみました。

尼崎市教育委員会では下記の3つの点に力を入れて取り組んでいます。

●Webフィルタリングソフトの活用
●ルールや、NGワードは生徒主体で決める
●ICT活用推進チームを作り、年7回交流会で情報交換をしている

兵庫県尼崎市教育委員会の事例

この記事でネットいじめについて兵庫県立大学の竹内和雄准教授はこのようなコメントを述べています。

「人間が3人いれば人間関係のトラブルは発生します。同様にネットでもトラブルは起きて、いじめにつながる場合もあります。ネット上は教師が見ていないこともあり、“無法地帯”と感じている子どももいます。ですが、今後、GIGA端末を文房具として使います。子どもが良くない書き込みをした場合、設定次第では教師が把握して指導できるようになります。そこもGIGA端末の可能性の一部です。大人も学ばなければなりません。今の子どもたちのネットでの状態を保護者も学校関係者もわかりません。大人と子どもが、ネットをどうやって使っていくべきか一緒に考えていくことが必要です」

大人と子供が一緒にどうネットを使っていくか、GIGAスクールの2年目の2022年はその見直しの時なのかもしれません。

2022年はGIGAスクール節目の年

今年度はGIGAスクール2年目となり、ICT支援員の私もその状況に慣れつつも、その上で起きる不具合、ネット回線の負荷の対応が多い年になっています。

現状で対策が急がれるのは

●ネットの管理について大人(先生/保護者)と生徒(子供)との連携
●ネット回線高速化

と言えるでしょう。

2021年までのICT教育変遷についてはICT教育はいつから?その変遷史をご覧ください。

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