2024年はICT支援員歴10年目節目の年となりました。
振り返ってみると10年前の生徒さんと、今の生徒さんはまったく違うといって過言ではありません。
10年前は情報は親や先生が取捨選択して渡すものでしたが、今の子供さんは沢山の情報に生まれた時から囲まれている”情報ネイティブ”がほとんどです。
その中で私個人が仕事で体験してきたことをお話しします。
目次
2013年 以前の職歴
- パソコンインストラクター(Office全般、HTMLなど)
- コールセンター(受発信)
- 事務
- Webページ作成
2000年代初期にパソコンインストラクターで働いていた経験は、今ICT支援員のスキルとして役立っています。その当時はWindows2000がとても新しいOSとしてもてはやされていました。Word、Excelをつかえることはいまでは当たり前ですが、この時は「とてもパソコンに詳しい」人として扱われていたのです。その時は5歳のお子さんから、86歳の生徒さんまで教えていました。
20代だった私は、パソコンの知識はとても詳しいつもりでした。しかし教えるとなるとまったく別のスキルが必要なのをその時に実感しました。
全体的に言って10歳以下のお子さんはパソコンの操作やルールを教えると「そういうものなんだ」とどんどん吸収していきます。しかしそれ以上になると「何のためにそうするか?」ということを考えながら学んでいきます。もっと年齢が経つと「自分は何をしたいのか、そのために今学んでいることがどう役立つのか?」ということを考えながら学んでいきます。
通っておられた86歳の男性は記憶力の衰えは隠せませんでした。しかし自分史をワードで作るという目標がありました。「自分は何をしたいのか、そのために今学んでいることを役立たせたい」という気持ちで満ちていたので、記憶力の衰えはパソコン教室に通う回数と、覚えたことを忘れないうちに自分史を書き進めるという形でカバーしていました。
そのインストラクターの経験は先生たちの授業サポートや授業支援でも役立っています。
またICT支援員は単に教えるだけでなく、時には事務サポートやヘルプデスクといった事柄も求められることもあります。その面で、コールセンターでの対応方法や、事務仕事、Webページ作成は役に立ちました。
2014年 ICT支援員になる
応募しようとおもったきっかけは、職業訓練校に通っていた時、その学校の先生に言われた言葉にあります。
職歴の洗い出しをして、そのなかで、パソコンインストラクターで働いていたときがとても楽しかったのを思い出しました。しかしWebディレクター(大規模化Webサイトの現場監督のような職業)と二者択一で迷ったので、講師の方に「Webディレクターと、パソコンインストラクター。どちらがわたしに向いていると思いますか」と質問をしたのです。その際、「パソコンインストラクターのほうが向いていると思います。」と答えがあり、それではパソコンインストラクター関連の仕事を探そうと考えました。
今の会社の広告で「パソコンインストラクター経験者優遇」とあり、応募して、働くようになった次第です。
2015年 1年目 戸惑った民間企業と学校文化の違い
1年目で特にとまどったのは、民間企業と学校の違いでした。
民間企業では「利益>=経費」という仕組みです。
利益が第一のため、いかに経費を少なくするか、その意識を叩き込まれてきました。特に2013年以前に働いていた企業では中小企業のため、1円でも経費を少なくするということを徹底していたものです。そのため当時派遣された学校で経費を少なくするという考え方がほぼなかった様子に驚きました。
比較的最新のipad、Macやその他の端末が配備されており、また地方自治体でさだめられているルールも緩めのため、先生から依頼されたことや自分がやってみたいことを、のびのびとできたのはその後の支援に役立ちました。
2016年 2年目 学校のICT教育は15年前のITスキル
少しずつ慣れ始めてきた2年目。
目についたのは学校のICT教育が「15年前のITスキル」だったことです。
2016年のITトレンドにはAI,IoT、デジタルマーケティング、VRなど、2024年現在普及しているものが上位ランクしていました。
※参考資料https://www.liber.co.jp/job-change-column/column775/
しかし学校では、そのようなITトレンドとは違うICT教育がなされており、「ネットで調べもの学習をすればICT教育、DVDなどで動画をみせればICT教育」といったような風潮がありました。
そして実物投影機を使いましょうと進めてもなかなか普及せず、実物投影機が収納ケースにしまわれて、まるで墓標のようにたたずんでいたのを今でも覚えています。
しかし私の担当している小学校では、比較的ICT教育が進んでいました。
小学校1,2年生からipadを触ってもらい、漢字、算数ゲームをし、ICTクラブというクラブ活動ではプログラミングをしたりと現在のGIGAスクールにつながる教育ができていたように思われます。
2017年 3年目 「ICT支援員は必要ない」と言われて
3年目に入り、今まで小学校で働いていたのですが、中学校に勤務が変更になりました。1校のみ担当していところ、10校を担当することとなり、月に1回ずつぐらい巡回するという勤務スタイルに変わったのです。
そのときに「ICT支援員は必要ない」と教頭先生から言われた一言がいまだに忘れられません。
その先生は学校教育ではICTは必要ないという考え方だったようで、そのように言われたようです。
3年目の私としては「そういう考えもあるのか」という冷静な気持ちと「私の仕事って…」という消極的な気持ちとまぜこぜになったものです。
でも何年かたってその先生から「次いつ来ますか」と言ってもらえたときには、心のなかで「やった!」とガッツポーズしてしまいました。
2018年 著作権関連のトラブルが多くなる
著作権関連のトラブルはこの年に限ったことではなく、2021年にも私の担当している学校で起きました。しかし2018年に著作権法第35条の改正があり、複製・公衆送信の範囲が広くなったことがトラブル増加の原因になったように思われます。
これは2018年だけでなく、年々トラブルが増加しています。
特に顕著なのは”学校のホームページ”です。
これは著作権法で「学校の授業においては、無許諾かつ無償で著作物を使用できる」とありますが、”学校のホームページ”は学校の授業ではないと判定されます。それで許可なくイラストをダウンロードし、学校だよりなどに使うと、賠償金を支払わなければならないケースが増え、2022年の9月から2023年の1月に顕著になりました。
担当している学校がトラブルにあった際、ICT支援員の私も事情聴取を受けました。
その教訓を受けて今までもホームページ更新には念入りにチェックしていましたが、さらにチェック回数を重ね、気になった点はすぐに担当の先生に確認するようになりました。
ICT支援員は単なるICT関係の事務員ではありません。情報セキュリティに関してアドバイスできることも求められています。
著作権法や、デジタルセキュリティについて今一度学ぶ必要があることを実感させられました。
2019年 学校が災害拠点場所と改めて実感
台風19号が直撃し、多摩川関連の河川沿いの学校の多くが避難場所になりました。
台風当日私は支援をする担当校がありましたが、帰宅できなくなると判断し、早めに学校側に連絡を入れ、日時を変更していただくように依頼しました。そのため私自身は避難することはありませんでしたが、その次の日から担当校に行ってみると、多い学校では数百人単位での避難があり、先生方の負担が大きかったことを知りました。
学んだ教訓は台風、大雨などが天気予報で出ている場合、できるだけ速やかに学校側に日時の変更を依頼することです。
ICT支援員は教職員ではなく、地域住民でもないので、避難対象ではありません。そのため被災時には担当校であっても避難場所にできないのです。
台風のようなあらかじめ予期できるものについては、日時を変更するなどして避難リスクをできるだけ避けましょう。
地震のような予期できないものについては、ICT支援員の対策を下記の記事で扱っています。
万が一学校に避難する場合、考えさせられることが、2024年の能登半島地震に伴うページのYahooコメントでありました。
公立小学校勤務の者です。 今回、勤務先が避難所になり、子どもが来る前に復旧作業をしました。 避難所として開放した教室のゴミ箱にお菓子のゴミや忘れ物のペットボトル。中にはチューハイの空き缶までありました。 校内のお菓子のゴミは、生活指導案件になります。アルコールは論外です。 飲食は命を繋ぐために必要なことですが、避難所はその後、子どもたちの教育の場になることも頭の片隅においていただきたい。 と思いながら、泥だらけの廊下にモップをかけました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1bf336aa8959dcbe48d4af78390d814a8636e5e5/comments
2020年 コロナ禍でGIGAスクールが前倒しに
「一人一台タブレットが配布されたらなぁ。そうしたら、ICT支援員の必要性がよくわかってもらえるのに」
そう思っていた矢先、その機会は突然訪れました。
コロナ禍により、2021年から予定されていたGIGAスクール構想が1年前倒しにされることになったのです。
しかしコロナ禍で1ヶ月近く仕事が休業になったうえ、徐々に通常業務に戻りつつ、GIGAスクールを導入していくのは先生方も手探り、私も手探りの状況でした。
今でも忘れられないのは、オンライン授業を導入するかについて文科省アンケートをとり、その学校の教頭先生に「オンライン授業でお手伝いできることはありませんか?」とお聞きしたところ、「わが校では時期尚早だと思われます」とやんわりと断られたことです。
また別の学校ではGIGAスクールでタブレットを導入することに拒否感情をもつ先生もいて、なぜ導入するのかと説明を求められたこともありました。
実際にはタブレットが届いてもすぐに生徒には配られず、準備段階がありました。
それと同時にプリンタなどが学年ごとに3台届いても使われずにパソコン室などの隅に置かれていて、端末を配備しても必ず使われるとは限らないという現実に直面するのでした。
そんな中でもタブレットを一人一台支給されるということは、ICT支援員には導入に際してアドバイスを求められます。
担当している学校では少しずつではありますが「ICT支援員は必要ない」という雰囲気が少なくなっていったのを感じていました。
2021年 オンライン授業の行き詰まり
2021年の9月ごろ、ようやくという感じでオンライン授業が始まりました。
というのも中学校や小学校でコロナが大流行し、それに伴い休校や学級閉鎖が相次いだため、オンライン授業に踏み切らずにはいられない状況に追い込まれたためです。
しかし、そのオンライン授業と通常授業のハイブリット状態は2か月と持ちませんでした。
というのは1つ目に対面授業以外の授業形式に先生方が慣れていなかったためです。
先生方は対面の授業は経験値が高く、自信を持って教えられます。
それでハイブリット授業では対面の生徒と先生がどんどん先にいってしまい、オンラインで授業を受けている生徒はその様子を眺めて、聴いているだけ、という置いてきぼりになってしまった様子も見られました。
2つ目に単なる授業配信ではなく、理解をしているか確認するため、プリントを提出させたり、オンラインテストをするなどの作業が必要になりました。
そのことは現在でも変わっていません。
校務や保護者との関係性を築く際、対人や学校にある機器を使って行わなければいけない(セキュリティ、情報保護のため致し方ないとはいえ)状況は、人と不要普及の接触を避けなければいけないと言われていた時に、学校がそうするのを難しくさせた要因の一つとなっています。
しかし明らかに変わったのは、以前はパソコンやタブレットを使うのはコンピューター室などで行う特別な授業だったのが、普通教室での授業で1日に一回以上は使われるようになってきたことです。
これはGIGAスクール、そしてオンラインスクールがあって初めてできたことと思えます。
それでタブレットを使うことで対人でなくても授業ができるという経験は長続きしませんでしたが、タブレットなどの端末を否が応でも使わなければならない状況は、ICT教育の大きな一歩に繋がったのでした。
2022年 「まん延防止」と故障続出
2022年の1月にコロナウィルスの「まん延防止策」が34都道府県で発令されました。
私の在住している神奈川県でもその発令された都道府県の一つでしたが、2020年のコロナウィルスが猛威をふるい始めた時より、担当している学校は落ち着きが見られました。
それはワクチンを接種できればある程度症状を抑えることができるなど対策がわかってきたからかもしれません。
学校もGIGAスクールが浸透していき、タブレットを使うのが授業で普通になっていきました。
先生たちも朝の会議や、そのほかの会議でもグループウェアを使って進めるようになりました。
実はこの先生たちが校務(学校の事務)以外でも日常的にタブレット、PCを使うようになったのが、ICT教育のスピードに拍車をかけたのだと思われます。
というのも2020年ごろあるベテランの先生に言われたことがあります。「我々教師は自信を持って生徒たちに教えたい。しかしパソコンやタブレットはそれができない。場合によっては生徒たちの方がよく知っている。自信を持って教えられないから、ICT教育に踏み出せない。」
その壁が、日常的にタブレット、PCを使うことによって先生方の自信につながり、結果として、授業で自然とICT教育ができるようになったのです。
また2022年は端末の故障が続出し始めた年でもありました。児童や生徒が端末に慣れ、授業で普通に端末を使うようになった回数の問題もあり、この年から私の勤務していた地方自治体の学校では、修理予算が出なくなるという問題も発生してきました。
2023年 AI乱世へ突入
この年はChatGPTをはじめとしたAIにスポットライトがあたりました。
先生方の話に耳を澄ますと、「ChatGPTに書きたい内容を筋書レベルで書いておくと、アッという間に素晴らしい文章があがってくる」と目を輝かせて話しておられます。
その一方”静かな反感”といったものもあります。
まったく使わないといったレベルの反感もあれば、使い方がよくわからないというもの、文科省などトップレベルの判断をまつといった意見もあります。
この点については一介の支援員である私の意見は差し控えますが、AIの普及により、下記の傾向が加速するのは間違いないことでしょう。
授業の冒頭から、鈴木先生は驚きの事実を発表。「現代人が1日に受け取る情報量は、平安時代の一生分であり江戸時代の1年分」だそう。情報を受け取るばかりでは頭がパンクするのも当然……。現代において情報整理が必要なのは、情報量の多さからも十分に分かります。
https://pencil.schoo.jp/posts/aeqVyYrG/
もしかすると今日受け取っている情報量は「戦前の1年分の情報量」になっているのかもしれません。
情報量が増えすぎるあまり、それが正しいか、間違っているか、自分にとって必要なのか、そうでないのか、精査できないまま、とりあえず情報を飲み込んでいく。そのような”情報フォアグラ”というべき状況を一介のICT支援員がどこまでサポートできるのか、考えさせられる日々でした。
2024年 10年目を迎えて
1月1日に能登半島地震が起き、そのあと支援のため旅だとうとした支援機と航空機が衝突するという事件がありました。
以前は年末年始は仕事のことを考えなくてもよい時としてあてていましたが、災害拠点となる学校で勤務しているという職業柄、災害の場合にも即応できるICT支援員とはどんな人物か考えさせられています。
次回 10年目を迎えた現役支援員が、ICT支援員に対して必要とされるスキルをご紹介します。